北海道医療大学 歯学部を卒業後、久留米大学 口腔外科学講座に入局しました。その後、親戚を手伝う目的で大分県にあった歯科医院を開業しました。地元の久留米に戻り開業したのは、2017年のことです。歯科医院の設計から整理収納から、何から何まで考え、それまでの経験と「こんな歯科医院にしたい」というアイディア、そして思いをカタチにしました。「高い水準の技術と設備で難症例も対応する」「厳しい基準をクリアした衛生面のこだわり」を実現するために、結果…かなりの投資をすることになりました(苦笑)。しかし、自分の家族に受けさせたい治療、再発のリスクを抑え、咀嚼・嚥下・発育という機能を正常に維持していただくための治療を提供するためには、必要なことでした。二極化が予想される歯科医院経営の中で、患者さんに選ばれ続ける歯科医院となるためには、知識と技術、そしてそれらをサポートする設備と環境を整えるのは必要ですから。
2020年は、新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、患者さんの感染予防対策に対する関心が高まりましたが、以前からできる限りのディスポーザブル製品を使用し、洗浄・消毒・滅菌を徹底している当院にとっては、新しく取り組まなければならない事項はなく、日常の診療は変わりませんでした。また感染を恐れて、患者さんの足が歯科医院から遠のくことも心配されましたが、当院は保険診療・自費診療の区別なく、患者数が減少することも、歯科医院経営が厳しくなることもありませんでした。SNSなどのニューメディアで人々の不安な気持ちからくる玉石混交の情報が飛び交うなかで、信頼され、選ばれるのは、患者さんの生の声や実体験(=玉の情報)だと思います。選ばれ続ける歯科医院となるためには、患者さんを思う心と弛まぬ努力、先を読む力がこれからも必要ですね。
知識や技術、設備や環境の「先を読む力」という点においては、特に、日本臨床歯科学会(SJCD)の先生方に鍛えていただいたことを、心から感謝しています。日本臨床歯科学会に初めて参加した時の衝撃は、今でも鮮明に覚えています。当時、先生方と私の間には歴然とした差があり、それから必至で勉強しました。また、口腔外科が専門の私に、研修のコースで接着のパートを担当するようにと課題を与えてくださった小濱忠一先生(福島県開業)にも、感謝しています。人に教える以上、必死で勉強しましたからね(笑)。そんな私も50歳を超えました。必死に勉強したあの頃にお世話になった方々、共に学んだ同年代の方々は、今では学会の理事や大学教授に就かれています。このような方々から得られる生の情報は確実に「玉」の情報であり、大変ありがたく思っています。 このように、「自主性に富む学び」は単に知識や技術を瞬間的に向上させるだけに留まらないことを実感しているので、当院のスタッフにも研修の受講を勧めています。これからも、歯科医師2人、歯科衛生士4人、歯科助手1人、受付1人の合計8人で、弛まぬ努力を続けていきたいです。
S-PRGフィラーを知ったのは、日本臨床歯科学会の福岡支部会だったと思います。松風社員の方が、Giomer製品とS-PRGフィラーから発現される機能について、ランチョンセミナーで解説されました。その時の私は、すべての情報を吸収しようと必死に勉強していた頃でしたから、素直にすべてを聞き入れました。現在は、先ほどお話した方々から「玉」の情報を得ることができるので、メーカーの説明を100%聞き入れずに後から自分でいろいろと調べますが(笑)。
そんなGiomer製品のすばらしいところは、現在でも私の信頼を裏切ることなく、評価も変わっていないということです。つまり、S-PRGフィラーから発現される機能をきちんと実感しているということです。真面目というか誠実というか、そんな松風社の印象も変わりません。企業としても信頼しているので、 当院はGiomer製品をはじめ松風社の製品を多く採用しています。
築盛・充填とそれぞれに求められるペーストの操作性はもちろん、コンポジットレジンに求められる基本的な特性である色調適合性、長期にわたる予後も良好です。それらに加えてGiomer製品ならではの抗プラーク付着性も実感しています。特に抗プラーク付着性は、ビューティフィル フロー プラスよりも向上したように思います。松風社のカタログには記載がありませんが、フィラーをナノ化したうえ高密度に充填したことにより、6種類のイオン(フッ化物・ケイ酸・アルミニウム・ホウ酸・ナトリウム・ストロンチウム)を徐放するS-PRGフィラーの表面積が増えたからではないでしょうか。そう考えると、歯質強化などの他の機能にもより期待できるのではないかと思います。
「液を筆に採り、粉を採取するとき」、「窩洞に充填するとき」といった、充填時の操作性がとても良いです。また、除去もしやすいですね。窩洞の形態によっては除去しにくい場合もありますが、硬化体がちぎれてしまうようなことはなく、一塊で除去できます。他社のレジン系仮封材は、非常に硬くなってしまい、除去が困難なことがありました。もちろん、辺縁封鎖性とS-PRGフィラーから発現される機能で、充填した窩洞内および辺縁にはプラークがほとんど認められません。
私が診療すると泣き出してしまう患児もいるため、なかなかシーラント処置をする機会がありませんから、歯科衛生士からの評価をご紹介します(笑)。 「水洗不要で、セルフエッチングプライマーの塗布からLED光照射完了までのチェアタイムが30秒と短いのは、患児に的確に処置するのには大変メリットのある特性です。また、歯質にやさしいセルフエッチングプライマーでありながら接着強さは十分にあり、残っていて欲しい裂溝からは脱落しにくいです。総合して、的確な処置と長期的な予防を期待して使用できるシーラント材です」とのことです。
再発のリスクを抑えるという点において、S-PRGフィラーから発現される機能は有効だと考えています。いくら窩洞形成や充填を的確に行なったとしても、定期的なメインテナンスを行なったとしても、修復の予後は、患者さんの日常生活と口腔内に入れた歯科材料に頼るところが大きいです。材料も歯も老いていきます。その老いの過程のなかで、家族同然の患者さんの口腔内でGiomer製品が働き、再発のリスクを抑えたり、歯が老いるスピードをゆるめてくれるなんて、どれだけ助かるか。
私の体も、もちろん老いていきますが、治療の質を低下させることのないように努めたいと思います。学びを怠ることなく、またデジタルやGiomer製品といった良い歯科器材のサポートを得ながら、歯科医師人生最後の日まで最良の歯科治療を提供し続けたいです。
取材:2021年