長崎大学歯学部卒業後は、第一口腔外科学教室に入局し、外来や入院患者様を担当していました。同大学院修了後、文部教官助手に任用され、研究・教育・臨床に従事。その後、同大学講師に昇任し、同大学病院で口腔・顎・顔面インプラントセンターを併任していました。そんな忙しく充実した毎日を過ごしている中、社団法人 日本口腔インプラント学会認定講習会(100時間コース)に参加した時のことです。講師として登壇された西村 眞 先生(当法人 理事長)とお話する機会を得て、久しぶりに地元の関西について話題が出たときに「歯科医師人生の最後は、地元で頑張るというのも良いかもしれないな」と、ふと思いました。
これだけインプラント治療で著名な西村先生が、治療や手術ではなく「予防歯科」に本気で取り組んでおられる。それは衝撃的でもあり、共感することでもありました。インプラント治療でこれだけのご活躍をされているのに、どうして真逆とも言える予防歯科にも取り組まれているのか?という衝撃。そして、口腔外科で多くの手術をしてきた私が感じていた「こんなことになる前に、もっと早く介入して、失う部分を少なくするお手伝いがしたい」という思いに通じるという意味での共感。西村先生のお人柄に惹かれ、予防に対する考え方に共感して親交を深める中、ご縁をいただいて2009年より当法人の診療所(大阪市・大阪狭山市)に勤務することになりました。2011年より、当院(堺市)で院長を務めています。
そんな予防歯科に対する熱い思いをおもちの西村先生の下に集まった私たちは、次の治療コンセプトを大切に、科学的根拠に基づいたライフステージに合わせた予防プランや最適な医療の提案をしています。
患者様一人ひとりに対して十分な説明を行なったり、丁寧な治療を心掛けておられる歯科医院がほとんどだと思いますが、それらには「誰に尋ねても同じ答えが返ってくる」ような歯科医院全体として一貫したものが必要だと、私たちは考えています。なぜなら、それが患者様からの信頼を獲得し、安心して通い続けてくださることに繋がり、結果として患者様の幸せと健康に繋がるからです。そのために、当法人では診療所同士をオンラインで繋ぎ、全員で一人の患者様に対して、治療前カンファレンス(問題点の抽出・治療計画の立案)を行なっています。毎週、火・金曜日の30分間、他の診療所の患者様のことも「自分の家族だったら」という考えを起点にして真剣に議論しています。さらに、治療終了時に歯科医師から歯科衛生士へ「治療後のリスク」を引き継ぐ治療後カンファレンスも行なっています。
当院は、歯科医師2人、歯科衛生士4人、歯科助手・受付4人の合計10人ですが、このような法人全体の活動も相まって、メンバーとの情報交換や交流は盛んです。全員が、楽しみながら成長できる環境と仕組みがあります。
S-PRGフィラーやGiomer製品に関しては、松風社が著名な先生方と大規模なセミナーを開催されているのを目にしていたので、代表製品としてPR活動されていることは知っていました。しかし、GiomerとS-PRGフィラーが松風社独自のもので一般的ではないことから、私にはわかりにくく、またGiomer製品とS-PRGフィラーの関係性が理解できず、私の関心は一旦薄れてしまいました。
それからしばらくして関心が高まったのは、長崎大学 歯学部の卒業後20周年の同窓会でした。同級生だった山田 亜矢 准教授(東北大学)が、S-PRGフィラーから発現されるイオンのバイオアクティブ機能について松風社と共に研究をされていて、臨床でも良好な結果が得られているという記念講演をしてくださったのです。「そんな機能を発現する材料だったのか」と感心しました。
その後、当院の材料を調べてみると、Giomer製品があったんですよ。山田先生の講演を思い出しながらPRGプロテクトシール(レジン系仮封材)を手に取り「だから、コレはプラークが付着しにくかったのか」と納得しました。知らないうちに、Giomer製品を選んでいたんですね。
Giomer製品を使用されている先生方が、異口同音に「Giomer製品の中で、最も抗プラーク付着性がわかるのは、コレ」と仰るレジン系仮封材ではないでしょうか。Giomer製品の特長であるバイオアクティブ機能ももちろん気に入っていますが、操作性が良いのも大変気に入っています。
まず、片手で操作でき、液量を調節できる50mL液の容器は、準備の際に便利ですね。ノズルを90°回転させるだけで粉を排出できる35gの容器も便利です。
充填時においては、程良い液量が筆になじみ、そしてその筆で粉の採取がしやすく、まとまりが良いですね。充填・築盛しやすく、無駄に広がらずにスムーズです。また、補綴装置の装着時には、インスツルメントで容易に除去ができる硬さも良いですね。以前使用していたレジン系仮封材は、充填時には無駄に広がってしまううえ、ガチガチに硬化して除去するのが大変でしたから。私の感覚ですが、除去時の硬化体は変色・着色もほとんどありません。
PRGプロテクトシールは、2014年に発売された後発のレジン系仮封材ということですが、仮封材としての役割(①象牙質削除面の汚染防止 ②外来刺激の遮断 ③咬合接触関係の保持 ④歯質の保護 ⑤審美性 等)はしっかりと果たしながら、術者や患者様のことを考えられた製品として、十分広まると思います。
う蝕予防のためのシーラント処置ですから、やはりエッチング不要というのが大変良いですね。
セットに付属されているニードルチップの先端径が非常に細いので、ニードルチップでそのまま裂溝に填塞できるのも気に入っています。インスツルメントでの填塞操作は、必要ありません。総じて操作性が良いため、トータルで処置時間が短いのはありがたいです。口を開けていられない、じっとしていられないお子様にとっては、数秒の短縮でも大きいですから。なお、填塞後の予後も良好で、脱落はほとんどありません。
2022年度の会員特典として、発売の7月に届けていただいたコンポジットレジン(以降CR)のビューティフィル ユニシェード フローは、周辺歯質に対する色調適合性の高さが良いですね。この1本でほとんどの症例に対応しています。提供していただく前は、他メーカーのユニバーサルシェードCRを使用していて、さらにそれ以前はビューティフィルフロー プラス Xを使用していました。
ユニバーサルシェードを使うようになった理由は、A3.5やA4などほとんど使用しない色調は、使用期限がきてしまい、廃棄することが多かったためです。その無駄を削減したいと思い、他メーカーのユニバーサルシェードCRを使用するようになりました。ここで、CRの色調を多数そろえなくても対応できる在庫管理の楽さと、色調選択が楽になりCR充填の操作がスムーズになることを実感したわけです。
そして、他メーカーのユニバーサルシェードのCRから、ビューティフィル ユニシェード フローを使用するようになった理由は、会員特典として届けていただいたことで、色調適合性や操作感を試すことができたというのがあります。実際に試してみて、使い慣れていたビューティフィルフロー プラス X F00 と同じシリンジの押し棒に力を加えたときのペーストの排出量、充填や築盛の操作感といった感覚的なものが、私には丁度良かったんですね。フロアブルCRと言っても、メーカーそれぞれに操作感が異なりますから。体で感じるわずかな操作感の違いは、私たちにとっては、スムーズに診療ができるかどうかという重要なポイントなのです。
ビューティフィル ユニシェード フローは、ユニバーサルシェードCRとしては後発の歯科材料ですが、 PRGプロテクトシールと同じように切り替える価値を感じることができれば、使用する方は増えるのではないでしょうか。
新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、人との接触ができない時期がありました。そしてそれは、生き方、考え方、健康、食事、働き方といった様々なことを見直す時間でもありました。情報に流されずに物事を本質的に見る力を養う時間になったとも言えるでしょう。そうした時期を経て、本当に価値があるものに目が向けられる時代に変わっていくと思います。当法人の「予防歯科」に対する考え方・取り組みに、賛同してくださる患者様もきっと増えてくると思います。また、本質的な物事の考え方というのは、当院および当法人全体のより良いチームビルディングにもつながってくるのではないかと思います。
治療という問題解決の後は、リスク伴走型のメインテナンスに移行します。問題発生以前の美しい天然歯以上にすることはできませんし、そのリスクマネジメントに終わりはありません。口腔内は一生診ていくもの、患者様とのお付き合いは一生続けるものだと考えています。そのリスクマネジメントを、患者様の口腔内という現場で一緒に行なってくれるのがGiomerだと考えれば、こんなに心強いチームメンバーはいないのではないでしょうか。
今回、取材に同席してくださった西村 眞 理事長や、金剛診療所・メインテナンスセンターの院長である的場正伍先生をはじめ、当法人全体で「予防歯科」の考え方・取り組みを広く発信していき、より良い歯科医療の実現に貢献していきたいと思っています。Giomer製品には、そのチームメンバーとして、これからも参加して欲しいですね。
取材:2022年