MiCD SMILE CIRCLE MEMBER
Interview

開業までの経緯と、現在の治療に影響する出会いなどをお教えください。
2012年10月28日に開催されたMiCDハンズオンセミナー(東京)で、宮崎真至先生から修了証書を授与された北山先生。
大学卒業後は、母校の総義歯の講座に3年間在籍しました。その後、勤務医として東京SJCDの会長である日高豊彦先生のところで9年間お世話になり、平成14年に川崎市で開業しました。
昨年は新しい知識と手技の習得、材料・機械の導入、医院におけるコミュニケーションの改善など、とてもよい変化のあった年でした。これまでにもセミナーに参加したり書籍を購入することはありましたが、忙しさに託けて「セミナーは参加しても、実践しない」「書籍は購入したことで満足してしまい、あまり読まない」という状態でした。しかし、開業して11年目に入った昨年、毎日同じことの繰り返しで本当によいのだろうかと考えるようになりました。材料や機械、手技が進歩している中で、「今のままでよい」と目を背けてきた自分を改め、もっと勉強しなければならないと思ったのです。今では、多い時には毎週のようにセミナーに参加し、書籍は熟読するように心がけ、良いと思うものは実践するよう頑張っています。また、私とスタッフとのコミュニケーション、全スタッフと患者さんとのコミュニケーションの改善などにも取り組んでいます。
ダイレクトボンディングで活躍する松風のビューティフィルシリーズと、「最終研磨の仕上がりが最高」と北山先生お気に入りのダイレクトダイヤペースト。
さまざまな良い変化があった昨年、コンポジットレジンに対する考え方が大きく変わり、私の治療内容に影響を与えた出会いが「MiCD」でした。昨年7月15日に開催されたMiCD Symposium 2012の内容は、コンポジットレジンの物性、Giomer製品群の機能性、保存修復の進歩、臼歯部2級窩洞・前歯部4級窩洞をコンポジットレジンで十分に審美的に仕上げることができるなど、驚くことが多かったです。そこで、ぜひ当院でダイレクトボンディングの審美歯科治療を取り入れていこうと思い、10月28日に開催された宮崎真至先生のMiCDハンズオンセミナーに参加させていただきました。
宮崎真至先生のMiCDハンズオンセミナーのご感想をお聞かせください。また、セミナー後はダイレクトボンディングに取り組んでおられますか。
MSCメンバーにお送りしている記念品。MiCD推進ポスターは入口を入って正面に、治療説明ツール「当院の治療方針」は受付横の本棚に設置してくださっていました。
「シンプルに考える」「複雑窩洞を単純窩洞化する」をキーワードに、臼歯部1級充填、臼歯部2級充填、前歯部4級充填、ラミネートベニアの順に手技をしっかりと習得できました。色調の調和や審美性を付与するポイント、解剖学的形態の付与といった手技にまつわる基礎・応用知識だけでなく、歯の構造、接着の重要性、材料・器具・機械の機能を最大限発揮させるポイント、そして患者さんが歯科医院を選ぶポイントなどさまざまなことを教えていただきました。
例えば、2級窩洞はリングやマトリックスを用い、ビューティフィル フローF10を使って窩底部とマージンをつくり、ペーストタイプのコンポジットレジン を用いて上部鼓形空隙を意識しながら隔壁をつくる。そして1級窩洞になった状態で、築盛に適した流動性の最も低いフロアブルレジン ビューティフィル フロー プラスF00を用いて咬頭を一つひとつ再現していく。その際には、咬頭や隆線といった残存歯質が持っている情報を手がかりに、咬合面の解剖学的形態を頭で思い描いて再現する。コンポジットレジンのタイプ別の使い分けや器材の使い方など、とても分かりやすく教えていただきました。
MiCDハンズオンセミナーに参加するまでは、臼歯部の2級窩洞のほとんどはメタルインレーで修復していましたが、今ではコンポジットレジン充填で修復するケースが増えました。その際には、先日発売されたビューティフィル E ポステリアを使用しています。形がつくりやすいうえ、形態維持性がよいので2級窩洞には最適です。研磨時にはダイヤインブラシを使っています。バフが届きにくい咬合面の裂溝を磨くのによいですね。大変重宝しています。また、前歯部4級窩洞などもダイレクトボンディングを実践しています。ある程度のレベルで審美的な修復ができるようになったので、当院独自の「自費診療保証 4年間」を付与して自由診療に取り入れたところ、おかげさまで“プチ自費”がかなり増えました。
ダイレクトボンディングを治療に取り入れることで、間接法で最低でも2回かかっていた治療の回数は1回に減り、アンダーカットを許容できるため残存歯質をできる限り保存できます。そして何より、即日で治療が終わるうえ、審美性が高いので患者さんにとても喜ばれています。歯科医師としてある程度の経験年数を経て慣れてしまった毎日の中で、「生活をしていくために歯科医師をしている自分」がいましたが、MiCDの考え方を学んでダイレクトボンディングを取り入れた今、患者さんに喜んでもらえることなどが励みになり、再び歯科医師の仕事に「楽しさ」を感じています。
治療において大切にされていることをお教えください。
最近導入された、MELAG社のClassB滅菌器「バキュクレーブ®31B+」。
コミュニケーションの改善にも取り組んでいるとお話しましたが、今更ながらとても大事なことだと痛感しています。半年前から始めた朝ミーティングでは、スタッフ全員で予約の患者さんを確認して気になる点などを共有しています。例えば、「Aさんは嘔吐反射が出やすいのでバキュームの位置に注意する」「Bさんは前回30分くらいお待たせしてしまったので、今日は早く治療に取り掛かれるように準備しよう」など。また、「情報カルテ」というのを患者さんごとにつくり、通常のカルテと一緒に保管し、スタッフ全員が気づいたことを書き込んで情報を共有できるようにしています。院長一人ができることなんて限られているんですよね。受付や歯科衛生士から見る患者さんの様子など、私の知らないことがこんなにも多かったのか・・・と思いました。
コミュニケーション、心配り、治療技術、衛生管理など、自分が患者になったときに受けたい治療は何かを考えて、スタッフ全員で取り組む医院づくりが徐々に形をなしてきました。これからも改善に取り組み、私の治療技術や当院の衛生管理など、一番よく分かっているスタッフが患者になったときに「相談したい」と思える歯科医院であり続けたいと思っています。