MiCD SMILE CIRCLE MEMBER
Interview

開業までの経緯と、開業から大切にしておられることをお教えください。
飼っているワンちゃんをモチーフに、いとこにデザインしてもらったというロゴ。ぶら下げている歯ブラシがかわいらしくて印象に残りました。
しかし・・・動物専門の歯科医院と間違われることもあるそうです(笑)。
痛みを伴う治療が多かったのでしょうか・・・母が「大の歯医者さん嫌い」でして、私に同じ思いをさせまいと、幼い頃から東北大学の予防歯科に通わせてくれました。そんな母のおかげで、小学生・中学生の頃はずっと、むし歯「0(ゼロ)」で表彰されていました。今でこそ、予防歯科はよく知られていて患者さんも多いですが、当時の診療室には私ともう一人患者さんがいるくらいで、とてもゆったりとした雰囲気でした。歯科医師や歯科衛生士の方は身近な存在であり、皆さんが明るく笑顔で優しかったので、幼い頃から歯科医療に対する印象がよかったです。それで、「大人になったら歯医者さんになるんだ」と決めていました。
大学卒業後は、研修医を経て大学院(高齢者歯科)へ進学し、勤務医を経て開業しました。私は生まれも育ちも仙台です。海と山が近く、自然が身近にありながら、都会の雰囲気もある仙台が大好きなので、ここで開業できたことをうれしく思っています。開業時はユニットは2台しかありませんでしたが、患者さんが増えたことと、しっかりと患者さんとお話をするためのチェアタイムが長く取れるように、ユニットは4台に増やしました。現在、歯科衛生士4名、歯科助手4名の合計8名のスタッフとともに、「患者さんとスタッフ、歯科医師との会話が常にあふれている歯科医院」を目指して、説明・カウンセリング・コミュニケーションを大切に日々診療を行なっています。MSCメンバーミーティング 仙台会場にご参加されていかがでしたか。
開発の詳細な経緯や実験データ、製品の特長や使い方の注意点など、開発されてきた方ならではのお話が聞けたのがよかったです。とても勉強になりました。そのほか、恥ずかしながら、2002年にFDIで採択されたMI 5項目の詳細を知らなかったので、当院の治療方針を見直すよい機会になりました。その5項目を知らなかったことは反省しましたが、私がずっと継続してきた治療方針と一致していたので、一方で自信も得られました。
もちろん、寺田林太郎先生のお話も勉強になりましたね。ユーモアのある方で、場を和ませながら話されたお人柄も好きになりましたが、「できる限り、歯質や歯髄は残すんだ。やってみた結果、よくない経過が見られたら、それを反省し、どうしてそのようになったのか考えて、次へと生かしたらいい」と、患者さんの歯を大切にする思いの強さにとても感銘を受けました。
症例においては、コンポジットレジンの充填のコツを1級から5級窩洞まで詳しくご提示いただきましたが、もっとも印象に残ったのが外傷歯の症例でした。寺田先生は総合病院内の歯科で診療されているため、一般の歯科医院と比べて外傷歯で来院される患者さんが多いと思いますが、当院では1年間で2、3人来られるかどうかです。しかし、そこで「年に2、3 人くらいの症例だから」と思うのではなく、その治療において多くのご経験を積まれた方に教えていただけると考えれば、こんなによい機会はありません。露髄している部分の洗浄を交互洗浄すると止血が得られないため次亜塩素酸ナトリウムのみで洗浄すること。歯頸側3分の1の歯根破折で側方脱臼している場合は、破折している歯冠を浮かせるようにして戻し、歯髄を挟まないように注意することなど、外傷歯の対処の仕方を詳しく教えていただきました。また、組織学的反応なども教えていただき、すぐに臨床で活かせることを多く教えていただいて助かりました。
ご愛用いただいているGiomer製品はありますか。
MSCメンバーミーティングの参加者にお渡ししたフルオロボンド シェイクワン。
松風の研究開発担当と寺田先生からの説明を忘れないようにと、その場で製品に直接書き込まれたそうです。使うときに確認できるのがgoodですね。
MSCメンバーミーティングに参加してから使うようになったのは、フルオロボンド シェイクワンです。フルオロボンド シェイクワンは直接覆髄に使用しています。術後疼痛はなく、経過は良好です。ミーティングでお聞きしたことを、忘れないようにとすぐに製品にメモを書き込みました。今では、使うときに確認ができるので、ここにメモをしておいてよかったと思っています。新しいものを使うときには、また新たに書き込まなければいけませんね(笑)。
ミーティングで松風社の3種類のボンディング材の特長や適した症例、使い方のコツをお聞きしたときに、ストックがあったことを思い出して使うようになったのが、ビューティボンド マルチですね。一旦、他社のワンステップボンディング材を使用していましたが、使いやすいのとアドヒーシブ層の薄さがよいと再認識しました。
フロアブルタイプのコンポジットレジンは、以前からビューティフィル フロー プラスF00とF03、ビューティフィル フローF02とF10を使っています。この数字のつけ方がとても有用で、治療中に「このくらいの流動性が欲しい」と思ったときに、自分の中で流動性の確認ができるんですよ。「F00は全く垂れない」「F10は10ミリ」と、ペーストを板に採取して1分間垂直に立てたときに、ペーストが流れる距離がこの数字なんですよね。とてもわかりやすいですね。一つお願いを言うならば、F00とF03のシリンジの押し棒の裏にもシールを貼っていただけると助かります。シリンジは立てて押し棒が見えるように保管しているので、ここにシールが貼ってあると、スタッフがスムーズに治療を補助できるようになります。
「これも気に入っているんです。エッチングしないのがよいですよね。ニードルチップの口径が小さいため填塞が的確にできるのもよいです。今のところ脱離によるトラブルはありませんが、脱離してもエッチングしていないので安心ですよ」と見せてくださったビューティ
シーラント。
なお、最も流動性の低いビューティフィル フロー プラス F00は、ペーストがまったく垂れないので、狙ったところに的確に隔壁をつくることができるのがよいですね。また、ペーストの切れがよく、出した後にニードルチップから垂れないのもよいと思います。
治療において大切にされていることをお教えください。
MSCメンバーにお送りしている記念品の治療説明ツールは、待合室ソファの前のテーブルに置いてくださっていました。
最初の見開きの部分、「歯の一生」のところがよいというお声をいただきました。
患者さんとしっかりとお話することです。一般的に、ご自身の歯をどのように治療されたのかということを知らない患者さんが多いということに驚いています。少し前の話になりますが、2012年11月12日号のPRESIDENT(プレジデント社)に、「シニア1,000人調査『リタイア前にやるべきだった』後悔トップ20」というのが掲載されていました。なんと第1位が「歯の定期検診受ければよかった」なんですね。せめて当院に来られている患者さんだけでも後悔させたくないので、今からご自身の口腔内に関心をもっていただけるよう働きかけています。例えば、治療の前後はもちろん、治療の途中にも説明しています。また、初診の患者さんは、必ず1時間とって最初のカウンセリングでしっかりとお話しています。
そのためには、日々進歩する歯科医療の術式や材料、器械の情報は得ておかなければならないので、セミナーには積極的に参加して勉強しています。また、そのセミナーで得たことは朝ミーティングでスタッフにも伝えて共有しています。スタッフにも話していますが、知識を得ることは恐ろしいことです。なぜなら、これまでの自分を否定することもあるからです。しかし、それを怖がっていてはいけないし、最新の情報を知らないことは「時には罪」となり得ます。そのことを胸に、当院の先頭を切って自己研鑽に励み続けたいと思います。