MiCD SMILE CIRCLE MEMBER
Interview

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インタビュー

開業までの経緯をお教えください。

MiCD Symposium 写真1午前診療後のスタッフミーティングの様子。昼食休憩の前に、10分程度の短時間であっても勉強会を開催して情報を共有されているそうです。

朝日大学歯学部を卒業した後は、同大学大学院歯学研究科に入学し、平成12年に修了しました。その後は、朝日大学歯学部口腔機能修復学講座に助教として勤務し、平成22年に退職、医療法人社団中川歯科医院(兵庫県 姫路市)に入局した後、平成23年に開院しました。

私の生まれは高知県高知市ですが、妻の生まれが一宮市(旧尾西市)でして、縁あってここで開院することになりました。名古屋駅から電車でたった10分程度の距離ですが、当院の前には田んぼが広がっており…なかなかの田舎でしょう(笑)。しかし、意外にも歯科医院は多いんですよ。それだけ、多くの住民がおられる地域なんです。

歯科医師は私を含めて3名、歯科衛生士8名、歯科助手および看護士2名、受付2名の15名で対応させていただいてはいますが、ありがたいことに多くの患者さんにお越しいただいているため、また、目指している「完結型歯科医院」を実践するためにも、設備の拡充が必要になりました。現在、歯科ユニットの増設や研修室の新設、歯科技工所を設ける工事を行なっています。

MSC MEMBER MEETING(大阪会場/3月2日)でお話いただいた、S-PRGフィラーの抗プラーク付着性の発見について、当時のことを教えてください。

大学院では、保存修復学講座に籍を置いて、電子顕微鏡を用いて材料とバクテリアの関係を中心に研究していました。ある日、教授から「新しいコンポジットレジンを開発するので、細菌付着性を電子顕微鏡で確認してもらいたいと、松風社から依頼が来ている。」と言われて、検索に取り掛かりました。実は、教授も私も…「コンポジットレジンに細菌が付着しにくいなんて、あり得ないだろう。」と、半信半疑で始めたんですよ。in vivoで検索するために、口腔内にS-PRGフィラーを含むコンポジットレジン片とS-PRGフィラーを含まないレジン片を貼り付けました。ブラッシングなしで12時間を経過したレジン片を電子顕微鏡で確認すると、S-PRGフィラーを含むレジン片の表面には10μmのフィルム構造物ができていて、その上にはプラークの付着が認められませんでした。驚いた私は、前処理やレジン片作製時の不手際という「私自身の問題で差が生じた」と思い、何度もやり直しました。しかし、結果は常に同じでした。その後、さまざまな検証を行い、このフィルム層の形成にはだ液が必須であること、だ液中に存在する抗菌性タンパク(Cystain-CとLysozyme)などが特異的に吸着して層を形成するという結論に至りました。

もっとも重要なのは、フィルム層の形成には再現性があるということです。抗プラーク付着性を有したフィルム層が、ブラッシングをして一旦消失しても再形成されるというのは、臨床において大変有用性があります。 また、この検索においては、実際の口腔内に貼り付けて12時間ブラッシングをしないという条件をクリアするために…協力を仰げるのは後輩だけでした。今回のMSC MEMBER MEETINGにも、たくさんの後輩が駆けつけてくれましたが、後輩たちにはとても感謝しています。

積極的にGiomer製品をご採用いただいているようですね。

「処置後の2次う蝕発症を抑制するつめ物材料(樹脂)を当院では導入しております」と、当院のホームページでは自信を持ってビューティフィルⅡの紹介をしています。コンポジットレジン修復においては、ビューティフィルシリーズ(ビューティフィルⅡ、フロープラス、フロー)を使っています。接着システムは、ビューティボンド マルチとフルオロボンド シェイクワンを症例に応じて使い分けています。フルオロボンド シェイクワンは、露髄してしまいそうな深い窩洞のう蝕において使用していますが、術後の疼痛もなく経過は良好です。

MSC MEMBER MEETINGでもご紹介したPRGバリアコートは、ホワイトスポットが認められる患者さんに定期的に塗布しています。矯正治療においては、プラークが付着しやすいブラケット周りに塗布しています。今のところ、これらの症例でう蝕の発生・進行は認められません。また、PRGバリアコートは、う蝕予防だけでなく、保険適用されている知覚過敏抑制材としても使用しています。患者さんによると思いますが、7種類の知覚過敏抑制材を用いても痛みが治まらなかった患者さん(14歳・女性)に塗布したところ、2回目の塗布で効果がありました。「ごはんがおいしく食べられる。沁みない。」と、大変喜んでいただいています。

シーラントについては、「エッチングにより歯を傷つけるうえ、う蝕を発症させるリスクが高いシーラントをわざわざ処置する必要はない」とシーラントに対して否定的な意見を持っていた当院の歯科衛生士が、ビューティシーラントだけは心配ないと積極的に処置を行なっています。リン酸エッチングが不要なのはもちろん、填塞のしやすさもよいですね。なんといっても水洗不要というのは大変操作性がよいです。口の中に水が入ってきたり、バキュームの音がしたりすると、おとなしくしていた子が、急に不安がって泣き出してしまうことがあります。そうなると、処置ができない、歯医者嫌いになってしまう…ということにつながってしまいますから。水洗不要というのは単にステップが少ないというだけでなく、大きな意味がありますよ。

S-PRGフィラーを含む新製品といえば、レジン系仮封材のPRGプロテクトシールが発売されましたね。高い辺縁封鎖性にS-PRGフィラーの効果が加わって、窩洞にプラークが入り込むこともありませんし、除去するときの嫌なにおいもまったくないと、当院の評価はとても高いです。このようにS-PRGフィラーがさまざまな領域の製品に展開されることで、歯科医療が患者さんの健康に寄与できる機会が増えていくのを、とてもうれしく思います。

患者さんへの説明に力を入れておられるようですね。

待合室の掲示板。待合室の掲示板。中央の目立つところに「MiCD」と「Giomer de 治療ポスター」を掲示していただいていました。

「さくデンタルノート」と「Giomer de 治療カード」お子さまに渡されている「さくデンタルノート」と「Giomer de 治療カード」。

ポスターは、待ち時間にたくさんの方がご覧になっているようですから、ポスターの掲示はおすすめです。

お子さんには、「さくデンタルノート」と「Giomer de 治療カード」を差し上げています。さくデンタルノートは、はがきサイズの紙をポケットに入れてファイリングする形式になっていて、その日の治療の記録を紙に書いてファイルし、お渡ししています。共働きのご家庭など、さまざまな事情がありますから、お子さんだけ来院されることや、お子さんの送り迎えだけされて治療には立ち会えない保護者もおられます。そのようなときに、治療の記録をきちんと残して保護者に伝えたり、使用した材料の説明をWebでご覧いただけるツールをお渡しするというのは、大変有用です。

検索すれば、歯科の論文でさえ辿り着くことができる時代です。研修医がタジタジになってしまうほど、私たちが想像している以上に歯科のことを調べて来られる患者さんもおられます。「○○ボンドで固定お願いします」とか、治療方法や材料も決めて来られる方もおられますよ…。患者さんのデンタルIQが上がっているのは、「歯を大切にしたい、できるだけ削りたくない」という思いからくることだと考えれば、私たち歯科医師も最新の情報と技術をもって、その思いに応えて差し上げるべく、努力をしなければなりませんね。

最初にお話された「完結型歯科医院」について教えてください。

私が専門でないことはスペシャリストに来てもらって当院で治療していただいています。完結型歯科医院というのは、「当院でできないから他院に送り出すということをしない」ということです。それぞれの分野のスペシャリストに患者さんを預けてしまうのではなく、スペシャリストとチームを組んで、当院が責任をもって患者さんの治療を行う体制を整えています。

患者さんと真剣に向き合えば向き合うほど、準備する時間も、説明する時間も、治療する時間も、設備費も、材料費も、人件費もかかります。しかし、これらは「かければ、かけるほど、自分に返ってくるもの」です。当院にたくさんの患者さんが来られている理由は、そこにあると思っています。

ピカのポスターと、写真入のスタッフ紹介。なぜか作先生だけイラスト…(笑)。

歯科ユニットには、大きなモニターが設置されています。口腔内写真やパノラマ、動画を用いた治療説明などに活用されています。

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