MiCD SMILE CIRCLE MEMBER
Interview

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インタビュー

開業までの経緯をお教えください。

MiCD Symposium 写真1

患者さんにリラックスしてもらいたと、診療室は森・水・空をテーマにした色使いで設えてありました。「SORAのお部屋へどうぞ」と、患者さんをご案内しているそうです。

日本大学松戸歯学部を卒業した後は、勤務医として6年勤めました。その勤務先が品川に分院を新設するということで立ち上げから参加し、そこで7年勤務しました。そのまま分院で院長を継続することも考えましたが、故郷にいる母の病を機に会津若松市に戻り、開業しました。残念ながら母はまもなく亡くなってしまったため、口腔ケアはしてあげられませんでしたが、今は訪問診療で多くのご年配の方の口腔ケアを行なっています。

歯科医師は私1名、歯科衛生士3名、歯科助手3(うち准看護師1名)の7名です。歯科医院は女性が多く、また活躍する場です。先日、産休を終えて職場復帰した歯科衛生士とは「働き方」について話し合いました。勤務できる曜日、時間、育児におけるご家族の協力体制など状況は人それぞれですから、本人が続けやすいように正直に希望を話してもらいました。その結果、週5日の午前中のみ勤務してくれることになりました。お子さんが成長したら状況は変わるでしょうから、その都度話し合って勤務時間などは柔軟に対応していくつもりです。次いで歯科助手も、産休を終えてそろそろ職場復帰してくれる予定です。この二人がよい事例となってくれましたので、他のスタッフが同じような状況になっても、悩むことなく相談してもらえると思います。女性が長く続けられて、勤めやすい職場でありたいですね。

MSC MEMBER MEETING (仙台会場/4月13日 ※)へのご参加は2回目でしたが、参加された理由を教えてください。

治療や術式のことはわかりますが、材料については松風社の方のほうがよくご存知です。このような少人数制で質問しやすく、そして材料に特化して研究開発部の方の講演もあるミーティングは面白いと、1回目のときに思ったので参加しました。また、講師は1回目と同じ寺田林太郎先生(平鹿総合病院歯科勤務)でしたが、1回目のご講演がとても興味深かったので、またお話をお聞きしたいと思ったのも理由です。今回のミーティングには、私のように2回連続して参加された方が何人かおられましたよね。寺田先生のお人柄、講演の内容…さまざまなご経験をお持ちであることに惹かれて、皆さん参加されたのではないでしょうか。“SEASON3”の開催も期待しています。

SEASON2のディスカッションでお話になられた「アルツハイマー型認知症の方の口腔内で活躍したビューティフィルフロー プラス」のお話を詳しくお聞かせください。

1回目のミーティングに参加してGiomer製品の機能を知り、ミーティング後にビューティフィルシリーズを採用しました。その頃に来院されたご年配の女性の31,32,33の露出した根面および根面う蝕に、ビューティフィルフロー プラスを充填しました。

予想だにせず、1年後は認知症になられ、ご家族に連れられての来院でした。以前はシャツの襟もピシッとして身なりにも気を遣われるお元気な方でしたが…。認知症の重症度は低いものの口腔ケアは十分にできなかったようで、残存歯はほとんどC4になっていました。ところが、ビューティフィルフロー プラスを充填した31,32,33は、二次う蝕になることもなく無事に残っていました。ご家族がブラッシングしやすい前歯であったことも要因でしょうが、それにしてもS-PRGフィラーの効果というのはこんなにもあるのかと驚きました。

それ以後、コンポジットレジンをはじめ、S-PRGフィラー配合のGiomer製品に対する信頼が厚くなり、Giomer製品をはじめとする松風社の製品を多く使用するようになりました。とくに私が気に入っているのは、ビューティフィルフロー プラス F00です。まったく垂れることないので、操作性がよく、使いやすいですよ。ワイン・コーヒー・紅茶・キムチ・ベリー類など着色しやすいものを好む食生活になってきていますが、充填後も色調にほとんど変化がありませんね。そのためには研磨をきちんとすることが前提となりますが、私は研磨しやすいと思っています。

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ご採用いただいているビューティシーラント(右)と、メルサージュヒスケア(左奥)の患者さま向けリーフレット。

MiCD Symposium 写真3

使用頻度が高くない材料や使い方に注意が必要な材料などは、見えるところに添付文書や使い方を貼って、いつでも確認できるようにしておられました。

そのほか、PRGバリアコートやビューティシーラント、ビューティコア、フルオロボンド シェイクワンなども使用しています。ビューティシーラントは、ニードルチップの径が0.4mmと細いため、なかなかペーストが出ず、力を入れたところ…チップの締め付けが甘かったのか、ペーストがチップの横から漏れてしまいました(笑)。その後に発売された0.6mmのニードルチップ(太)を、現在は使用しています。以前より押し出し感が軽くなり、使いやすくなりました。しかし、径が大きくなったからといって小窩裂溝から大きくはみ出すことはなく、また探針などで修正する必要もありません。チップからそのまま填塞できていますよ。

PRGバリアコートは、とくに知覚過敏症状の強い方に使用しています。症状があるうえ、根面が露出している方については、根面う蝕の予防も期待して積極的に使用しています。コンポジットレジン充填では、他社のボンディング材を使うこともありますが、充填する材料はビューティフィルシリーズを積極的に使用しています。他社の材料もありますが、カリエスリスクの高い患者さんにはGiomer製品を使うようになりました。

積極的に訪問診療を実施されているようですね。

訪問診療を始めたきっかけは、2011年の東日本大震災でした。ここ会津若松市は、福島第一原子力発電所の事故が起こった大熊町の方々の受け入れ先であり、多くの方が引っ越して来られました。県の要請を受けて始めた訪問診療でしたが、木曜日を訪問診療の日と決めて続けていくことにしました。現在は、土曜日の午後も実施しています。歯科の訪問診療があることさえ知らないご年配の方々からは「患者は先生のところ(歯科医院)に行くもんだと思っていました。まさか、先生が来てくださるなんて。ありがとうございます。」と感謝の言葉をたくさんいただきました。「こちらこそ、そんなありがたい、うれしい言葉をかけていただいてありがとうございます」という気持ちでいっぱいになりました。同じことを感じたようで、今では私以上に歯科衛生士が積極的に訪問診療を進めてくれていますよ。

幼い頃から人助けができる仕事に就きたいと思っていました。医師になることも少しだけ考えましたが、毎日多くの生死に直面する場面には立ち会う勇気はありませんでした。そこで、手先の器用さを生かして、人助けができるといえば…と歯科医師を志しました。しかし、「先週、仮設住宅にお伺いした方の口腔ケアはもうできない」というように…訪問診療を行うようになって、人の死を身近に感じることが多くなりました。患者さんが必要としてくださる限り、当院一丸となって訪問診療は続けて行きたいと思っています。

患者さんの変化を感じることはありますか。

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ある施設の訪問診療の計画表。部分床義歯が多く、似た治療が多いため、間違いなく進められるようにスタッフさんが作られたそうです。

以前はご自身の口腔内に関心を持つ患者さんは少ないものでした。ご年配の方においてはその割合は高く、義歯やう蝕の修復は「噛めればよい」という程度を希望されていました。しかし、現在は「もう少し見た目をきれいにして欲しい。」「治してもらった歯の色を、隣の歯ともう合わせて欲しい。」など、審美性を要求されることが多くなったのです。ご自身の口腔内に関心を持つということはよいことですし、人から見られることを気にするのはよいことだと思っています。

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感染防止のため、ディスポーザブルできるものは積極的に採用されています。分別するためにたくさんのゴミ箱がありますが、それぞれ一日でいっぱいになってしまうそうです。

また、小学校の担当歯科医として歯科健診をしていますが、う蝕「0」という子どもがいるのは驚きです。ご家族の教育がいいのか、本人が気をつけているのか…さまざまな要因が重なってのよい結果だと思いますが、担任の先生や養護教諭は「他の病気は容易にコントロールできないが、むし歯は自分で防げる病」として積極的に指導されているそうで、これがもっとも大きいのではないかと思っています。

開業して2日、ともに午前中だけですが、タービンの音が聞こえない日がありました。とても気持ちのよい日でした。いくら歯質の削除量を最小限に止めるとはいえ、やはりできるだけ歯を削りたくないものです。ときどき、ブリッジやクラウンなど、どれだけ健全な歯質を削除しなければならないのだろうかという気持ちを抱えながら、形成している自分がいます。
患者さんと二人三脚で予防をしっかりと行なって、むし歯をつくらせない。当院で行うのは、予防処置とメインテナンスだけ。究極の目標ですが、そんな「タービンの音が聞こえない日」が増えるようにしたいですね。

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