MiCD SMILE CIRCLE MEMBER
Interview

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インタビュー

開業までの経緯をお教えください。

MiCD Symposium 写真1

院内感染対策にはとくに力を入れておられます。「患者さんを家族のように想い、治療にあたる。」という気持ちが表れている滅菌室。

著者は思い出せませんが、高校3年生の夏に東京都巣鴨図書館で「医師よ我が子を返せ」という本に出会ったことがきっかけで、医療の道を志しました。生まれ故郷の岩手医科大学に進学し、卒業後は福島県いわき市の前山歯科医院に勤務し、恩師の前山實先生と出会い、歯科医療人としての基本を徹底的に学びました。茨城県にある分院で院長を務めた後、1997年に開業しました。分院の院長として体制を整えて、引継ぎを行いながらの開業準備は想像以上に大変でした。最終的には、茨城県出身の妻と私の出身地である岩手県大船渡市の中間に位置し、親類も住んでいるこの東松島市を選びました。11月1日という1並びの日に開業し、18年が経ちます。

現在の体制は、歯科技工士1人、歯科衛生士1人、歯科助手2人、受付1人、パート1人、滅菌清掃専任2人です。金属床、CAD/CAM、ジルコニア以外は院内ラボで製作していますが、やはり松風社のS-WAVEシステムなどCAD/CAMはとても気になりますね。

とくにこだわっているのが院内感染対策で、滅菌専用の部屋を設けています。インプラントを導入した10年前にクラスBのオートクレーブと、医科用オートクレーブを合わせた2台体制で、器具はオペ用と一般治療用を分けて滅菌しています。個装滅菌、ディスポーザブル製品の使用、オゾン水なども導入し、滅菌室は滅菌専任のスタッフのみが出入りをする徹底した入室管理も行なっています。低温プラズマ滅菌システムも検討していて、今後も感染対策には注力して行きたいと思っています。

MSC MEMBER MEETING(2014年4月13日)に参加された後に歯科医師会で勉強会を開催されたそうですね。

尊敬している大学の先輩である寺田林太郎先生が臨床編(Part2)の講師だったので参加しました。いまやフッ素徐放性の製品は当然のようにありますが、Giomer製品はそれを含めた6種類のイオンを徐放することを知り、大きなショックを受けました。なぜ今まで知らなかったのだろうと。以前からビューティフィルⅡをはじめ、フローやフロープラスは使用していましたが、操作性が気に入って使用しているのが理由でした。松風社の研究開発担当の方と寺田先生の講演でS-PRGフィラーから徐放されるイオンの多機能性を知り、操作性だけではなく機能的な裏付けを学びましたが、参加するまでは製品の最大の特長を知らずに使用していました。

このすばらしい情報を、ぜひとも石巻歯科医師会の先生方にも伝えなければならないと思いました。5年ほど前から石巻市歯科医師会の学術担当理事を務めているので、石巻地区に講師を招聘することが私の使命だと感じていたところでしたから。

その後、寺田先生をお招きして開催した勉強会の評判はとても高かったので、もう一度、Giomerの勉強会を開きたいと考えています。2015年度は小児歯科分野の講演を計画していて、小児患者へのGiomerの有用性を紹介していただきたいと考えています。

MSC MEMBER MEETINGからGiomer製品を多数採用されたそうですが、その理由を教えてください。

MiCD Symposium 写真2

診療室に入るとすぐ目立つ場所にMSCメンバー証書を飾っていただいています。

メーカーの説明だけでは宣伝に聞こえてしまうところを、寺田先生が臨床の実績を交えてご講演くださったので説得力がありました。以前から低濃度のサホライドを使用していましたが、フッ化ジアンミン銀に代わるPRGバリアコートの話も衝撃的でした。最近は、フッ化ジアンミン銀で歯が黒くなることを、保護者だけでなくお子さん自身も嫌がりますが、フッ素塗布だけではそれに代わる効果は期待できません。そのため、脱灰が始まった初期う蝕のところに、PRGバリアコートを塗布するのは非常に有効だと思いました。あとは、フッ素のリリース&リチャージ機能ですね。口腔内で長期に亘り予防効果が持続するということは、とくに高齢者で唾液の分泌が減少している患者さんにとって、非常にありがたいことです。

また、Giomer製品を多数採用したのは、6種類のイオンの効果を症例を通じて確かめたかったからです。たとえば、以前は仮封をする前に知覚過敏抑制を目的として、窩壁にレジン系コーティング材を塗布していました。しかし、PRGプロテクトシールを使い始めたところ、知覚過敏も抑制されているようで、コーティング材が不要になりました。また、以前のレジン系仮封材は硬すぎて歯肉を圧迫するのか、粘膜を傷つけることがありましたが、PRGプロテクトシールのゴム弾性は、適度な硬さのためか歯肉の状態が良好です。

他メーカーのレジン系のシーラントを使用した時のことですが、填塞したレジンが欠けてしまうと、リン酸で処理した歯質はう蝕になりやすいうえ、欠けているのを発見した時にはシーラント下にはう蝕が進行してしまっているという苦い経験をしました。私の娘にシーラント処置した時にも同じことがあり、継続した口腔管理が難しい患者さんには、時にシーラント処置が逆効果になることから、罪悪感を感じて控えていた時期がありました。しかし、ビューティシーラントはリン酸処理がないうえ、Giomerの効果が期待できるので、最近は安心してシーラント処置をするようになりました。「家族に使用したい安心できる材料」というのは、大切な採用ポイントです。

お気に入りの製品はありますか?

臨床をとても有意義なものにしてくれて感激したアイテムが、MiCDインスツルメントキットです。以前からインスツルメントには関心があり、多くのインスツルメントや筆を所有していましたが、MiCDインスツルメントはとくに気に入っています。#4はしっかりと圧接ができ、平面を作り上げるのには#3が使いやすく、そして#1#2は遠心にも近心にも裂溝の付与がしやすい!よく使用するので、2セットを滅菌して交互に使っています。現在のCR修復は、詰めればよいという治療では通用しなくなってきているので、裂溝までこだわる方には本当におすすめですね。

PRGバリアコートは、半年くらい臨床経過を観察しているところです。よく使用する部位は、第二大臼歯の頬側遠心面です。先日、第二大臼歯の遠心面が、第三大臼歯の近心傾斜によって初期う蝕になっていた患者さんがおられました。第三大臼歯の抜歯をすすめましたが、抜歯はしたくないという希望でした。そのため、PRGバリアコートでう蝕が進行しないよう、処置をしました。PRGバリアコートがあって助かりましたよ。第三大臼歯が萌出し始めたら、積極的に第二大臼歯の遠心面にPRGバリアコートの予防的塗布を患者さんにすすめるのも、一つの方法だと思いました。

当院で一番多い患者さんは50歳代後半の女性ですが、口腔乾燥症によるリスクが高いため、Giomer製品の特長は当院の患者さんに必要な治療とマッチしています。これからも続く超高齢社会には、必須の製品群ですね。

MiCD Symposium 写真3

石巻地区の歯科医療はどのような状況ですか?

MiCD Symposium 写真4

石巻に限りませんが、私たちくらいの年代になってくると、勉強会に積極的に参加する人が少ないように思います。とくに、遠方の勉強会には参加しにくいようです。そこで、石巻歯科医師会では、会長の泉谷信博先生を筆頭に、石巻に講師を招いてセミナーを開催し、参加しやすい環境をつくっています。年に4回はセミナーを企画していますが、その中でもMiCDとGiomerは絶対に会員へ伝えたい内容です。

東北では、今でも仮設住宅にお住まいの方が多く、家族全員がゆとりある洗面スペースを持てないため、朝の歯磨きもできずに登校する子どもが多くいるのが現実です。私は学校医も務めていますが、震災後はう蝕が増加する傾向にあり心配していました。今年になってようやく例年並みに戻り、ほっとしているところです。東北でもようやく行政にフッ素の予防効果が理解され、日本歯科医師会の全面バックアップを受けて、フッ素の応用が進んでいます。東北はDMF指数がワースト5に入る地域でしたが、幼児検診でのフッ素塗布も普及し、予防への取り組みが実を結ぶことを期待しています。

自らを犠牲にすることが決してよいとは言えませんが、私は滅私奉公の気概で努力、研鑽して行きたいと思っています。それが患者さんの喜びに繋がり、努力が報われたという喜びに繋がります。この喜びを生涯大切にして歯科医療を提供するためには、勉強し続けていかなければならないと考えています。

昨年11月に仙台と石巻を結ぶJR仙石線の線路が繋がり、今年の6月にはようやく復旧する予定です。線路の周りには街が創られ、復興の期待がかかっています。当院も新しい街の医療の一端を担う立場として、私が提供されたい・私が家族に提供したい治療を、地域の患者さんに提供し続けて行きたいと思っています。

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