MiCD SMILE CIRCLE MEMBER
Interview

開業までの経緯をお教えください。

おかもと矯正歯科クリニックの皆さま。
“どのような些細なことでもご相談いただける、ストレスのない歯科矯正治療・歯列矯正治療を心がけています!”
当クリニックは、観光名所であり街のシンボルでもある時計台を間近に臨む立地にあり、ここに開業して7年になります。北海道大学歯学部で学び、卒業後も大学院に残って矯正の研究をしながら附属病院に勤務していました。大学院卒業後も病院勤務をしばらく続けていたこともあり、ずっと診てきた患者さんと継続して関わらせていただく道を選ぶか、地元の横浜に戻る道を選ぶか…非常に迷いました。結局、札幌で幼い頃から診てきた患者さんたちを最後まで治療したいという気持ちが勝り、開業に至りました。現在は、私、歯科衛生士3名、受付1名で日々の診療にあたっています。
「MiCD」というコンセプトや「Giomer製品」を矯正歯科医師の立場からどのように捉えておられますか。
「患者さんの歯を大切に考える」という意味で、矯正歯科医師にとってもMiCDコンセプトとGiomer製品は共感できますね。
そもそも矯正治療とは、審美(CD=Cosmetic
Dentistry)を目的の一つにしています。しかし、その治療過程では医原性のカリエスになりやすい環境下に置かざるをえない状況があります。例えば、すべての歯にバンドを装着する全帯冠装置を使用していた頃には、バンド装着によるう蝕リスクの上昇は、当然問題として存在していました。そのため、私たち矯正歯科医師は、ハイジーンコントロールをしながら、TBIやPMTCで医原性のう蝕を予防することが当たり前になっていました。このように、歯列の矯正だけでなく、う蝕予防という患者さんと二人三脚の治療を進めることによって、ようやく最終的にCDを得られるというのも矯正治療の特徴です。
どうしても治療期間中にはう蝕リスクが高まるので、最小限の侵襲(MI)の要素を組み込まなければならないと思いながら治療に向き合ってきました。そんなある日、附属病院勤務時代に松風社の研究開発担当の方とお話をする機会があり、フッ素リリース&リチャージ機能や抗プラーク付着性を発現するS-PRGフィラーを知りました。当時、クラスパーというフッ素含有のボンディング材やスーパーボンドを使用していましたが、S-PRGフィラーに高い関心を持ちました。このフィラーが含有されている材料を用いることで、使用した部位に限局するものの、「材料でう蝕に対する予防的アプローチができること」に驚き、材料のコンセプトに共感しました。
また、学生時代に教わったボンディングの術式では、接着のためにはやむを得ず当たり前にエッチングは行うものだと思っていましたが、リン酸エッチングによる過度の脱灰を伴うことなく接着するのであれば、その方がよいという当たり前のことにも気づかされました。“当たり前”を改めて見直すというのも大切なことですね。「ビューティオーソ ボンド」は、S-PRGフィラーが含まれているうえ、歯質にやさしいセルフエッチングで接着することもあり、使用しています。
デンタルエコーVOL.179でもお話させていただいたビューティオーソ ボンドの改良新製品「ビューティオーソ ボンド Ⅱ」ですが、プライマーが2液混和タイプから1液性になったことは、無駄がなくなり非常に大きな改良が加えられたと思っています。2液を混和するタイプのものは、毎回確実に同量を採取し続けるということが難しく、どちらか一方の液が余ってしまうため、使い切らずに捨ててしまうのはもったいないと思っていましたから。
コンポジットレジン系の製品は歯質側にレジンが残ることが多かったように思います。やはり歯質にレジンを残さずきれいに外したいですよね。ビューティオーソボンド自体のボンドペーストによる歯質への影響も、エッチング処理をしないこととS-PRGフィラーの効果のためか、ディボンディング後の歯面は従来のビューティオーソ ボンドよりも格段にきれいです。歯質に残ったレジンを除去する時に研削材で歯質を傷つけなくて済みます。しかし、ビューティオ-ソ ボンド Ⅱのレジン自体はMMA系に比べると硬いため、歯質にレジンが多く残ってしまった場合は除去するのに時間がかかります。除去しやすく歯質にダメージを与えない研削材が開発されるか、ボンドペースト自体の硬さをもう少し軟らかくしてくださるとうれしいですね。
デンタルエコーVOL.166で症例を紹介させていただいた「PRGバリアコート」は、発売当初から使用しています。う蝕予防として用いる場合には健康保険が適用されませんが、矯正治療は自費診療が主なので、診療の中に組み込んで使用するのは難しくありませんでした。PRGバリアコートをもっともよく使用する場面は、萌出したばかりの7番のう蝕予防です。生え始めたばかりで、まだ歯肉弁が覆いかぶさっているときに歯肉弁をめくり、そこに塗布しておきます。う蝕予防といえば、もちろんブラケットの周辺歯質にも塗布しています。確実なリコールで患者さんの口腔内を管理しやすいのも矯正治療の特徴なので、歯科衛生士のハイジーンコントロールの効果が得やすいのですが、それでも矯正中にう蝕になる患者さんはおられます。そのような患者さんは、歯科医院のハイジーンコントロールだけでは管理が難しいため、よりいっそうPRGバリアコートの活躍が期待されます。ほんの小さな白濁でも、見つけたらすぐに塗布していますよ。これから応用しようと考えている方法ですが、大臼歯バンドを装着した内面やマージン部分も、う蝕リスクが高いため、HY材配合のハイ-ボンドセメントでバンドを装着した後に、セメント周辺にバリアコートを塗布しようと考えています。
健康保険適用として認められている知覚過敏症への適用も、積極的に行なっています。非常によく効いていて、知覚過敏症状をお持ちの方には必ず塗布しています。塗布して1か月後の再来院時には沁みないと言われています。さまざまな処置を受けられても症状が改善されなかった患者さんにも、改善が見られるほどです。表面を確実にコーティングできているからなのか、イオンの効果なのかはわかりませんが、作用機序には興味があります。
歯科医療に携わられる中で、やりがいや生きがいを感じる場面はどのようなときですか。

こだわりの「歯ブラシシャンデリア」。
歯ブラシの光が7色に反射しながら、患者さまを迎えます。
治療が終わったあとに、患者さんから感謝の気持ちとしてプレゼントをいただくことがあります。治療費もいただいているので本当はいただくわけにはいかないのですが…やはり治療結果に対する喜びを形に表して伝えてくださっていると思うと素直にうれしいですね。そのように患者さんが心から喜んでくださるのは、スタッフ全員の協力があってこそ。無事に患者さんが満足される治療結果を得られたのは、スタッフのおかげだと心から感謝しています。
また、お子さんから修学旅行のお土産をいただくことがあります。お土産を選んでいるときにご家族やご近所さんにはおよびませんが、長いお付き合いをさせていただいている私たちをその中に加えてくれたと思うと、治療するだけのお付き合いでないことを感じてうれしくなります。
さて、近頃では矯正治療でう蝕になったという訴訟もあるくらいですから、長いお付き合いだからこそ気を引き締めなければならないという面もあります。S-PRGフィラーが配合されたGiomer製品を使用することに加え、歯科衛生士もカルシウム製剤やCHX系のホームケア製品を併用してう蝕予防に取り組み、来院されたときにはしっかりとハイジーンコントロールをする。長い期間に亘る弛まない努力があってこそ得られる、そして患者さんが心から満足してくださる治療結果にこだわり続けていきたいですね。