MiCD SMILE CIRCLE MEMBER
Interview

コンテンツトップヘ戻る
MiCD SMILE CIRCLE MEMBER インタビュー

開業までの経緯をお教えください。

父・山賀禮一(大阪大学 名誉教授)が医学博士、工学博士であり研究者であったということも、歯科医師を目指した一つの理由ではありますが、もう一つ理由があります。高校生のときに入院したことがあり、「科学は人の役に立ってこそ価値がある」と思い、将来は人の役に立つ研究がしたいと思うようになりました。
大学の受験では、歯学か医学のどちらかに進もうと願書を2通提出しましたが、受験日の朝、目覚めたときに「歯学に進もう」と決めました。大阪大学歯学部を修了した後、大阪大学大学院で4年間学び、大阪大学歯学部で助手と講師を18年務めました。講師をしている間に、ロンドン大学 歯学部に留学する機会を得ました。臨床しながら大学に勉強に来る英国歯科医師と一緒に大学生活を送っていましたが、彼らのように臨床しながら研究する道もあるのかなと思うようになりました。
帰国して数年間、大阪大学歯学部に勤めた後、遅かったとは思いますが47歳で開業しました。当院は、私を含めて歯科医師2人、歯科衛生士2人、歯科助手4人、事務1人の9人です。当院は大阪府高槻市と茨木市の中間にあり、マンションや一戸建てがほとんどで、まさに「住宅街」の中にあります。患者さんはご近所さんが多く、長年通ってくださっている方ばかりです。患者さんと一緒に年を重ねてきたからなのか、現在は義歯治療が多いですね。

Giomer製品に含まれる「S-PRGフィラー」は、HY材の作用機序を参考にして松風が特許技術により開発しました。改めて、HY材についてお話をお聞かせください。

HY材配合のハイ-ボンドシリーズ。たくさんの種類を揃えてくださっていました。

父が開発したタンニン・フッ化物合材=HY材を参考に、S-PRGフィラーを開発していただき、また、HY材が含まれるセメントでは実現できなかった修復部位への充填や塗布ができる材料を開発していただいたことを大変うれしく思っています。生体に対してすぐれた効果のあるHY材ですが、灰褐色の粉末であるため、松風社と共同開発した「ハイ-ボンドレジグラス」「ハイ-ボンドテンポラリーセメント(ソフト・ハード)」「ハイ-シール」などのハイ-ボンドシリーズをはじめとする“セメント”での製品展開に限られていましたから。

貴重なHY材も見せてくださいました!

HY材はタンニン酸(20%)、フッ化ストロンチウム(25%)、フッ化亜鉛(50%)、pH調整剤(5%)で構成され、フッ素とストロンチウムはヒドロキシアパタイト中のカルシウムや水酸基と置換して歯質を強化させます。また、タンニンや亜鉛は細菌の活性を低下させる作用や有機物の分解・腐敗を防ぐ作用があります。そのため、歯質のタンパク質とイオン結合することによってタンパク質を凝固させ、象牙細管を封鎖して外来刺激も遮断できます。
このように、HY材を配合したセメントには、抗菌性・抗酵素性・耐酸性の向上、二次う蝕の抑制、歯髄保護および知覚鈍麻などのさまざまな効果が報告されているので、当院では信頼できる材料としてハイ-ボンドシリーズを使用しています。
例えば、水硬性セメント「エイチワイシー」は、知覚過敏を発症している臼歯に使用したり、覆罩に使用したりしています。また、有髄歯で支台歯形成をした場合は、水を含ませた綿球に粉を付けて支台歯に軽く押し当てて、沁みないように事前に処置をしてから印象採得をしています。

MiCD SMILE CIRCLE MEMBER MEETING(大阪会場)のご感想をお聞かせください。

フルオロボンドシェイクワンの保存容器には、スタッフさんオリジナルの使い方の説明が貼ってありました。工夫をされていますね。

ビューティシーラント、ビューティフィルⅡ、ビューティフィル バルク、ビューティフィル フロー プラス、フルオロボンド シェイクワン、フルオロボンドⅡなどのGiomer製品は、以前から使用しています。しかし、改めて自分が使用している材料について研究開発部の方から説明を伺うと、知らないことがありました。とくに、充填したコンポジットレジンの表面にはプラークがほとんど付着しなかったという実験結果には驚きました。限られた診療時間では「悪いところを治す」ことが優先になってしまうので、コンポジットレジン修復では修復後に確認をすることはありませんでした。今後はプラークの付着にも注意して、修復後に観察してみます。

また、臨床家として講演をしてくださった福本敏先生(東北大学大学院 小児歯科学分野 教授)のお話も興味深く、ビューティシーラントとPRGバリアコートを実際に使用されている方のお話は、参考になりました。とくに、「PRGバリアコート」は、父が開発し、乳歯う蝕の抑制に効果が認められているサホライドの進化版=透明のサホライドとも言えると思います。
サホライドは、タンパク質とリン酸カルシウムの強化が同時にできるフッ化ジアンミン銀です。乳歯のう蝕抑制に効果が認められ、1970年から健康保険に適用されていますが、①歯髄刺激性があること ②う蝕になった歯質や歯垢を黒色に変色させることから、いくら乳歯とはいえ、前歯に限らず臼歯においてもお子さんに嫌がられる面がありました。
当院では、ほとんどが保険診療なので、現在はう蝕予防(健康保険適用外)としては使用していませんが、ミーティング後から健康保険の適用となっている「知覚過敏抑制材」としてPRGバリアコートを試しています。歯肉が退縮したために知覚過敏症を発症した50~60歳代のお二人の前歯に使用したところ、予後は良く、沁みないようです。ミーティングでも使用上の注意を教えていただきましたが、ベースとアクティブを混和すると早い段階で粘稠度が上がるため、早く薄く塗布するにはコツを得る必要がありますね。

待合室に置いてある「山賀歯科クリニック通信」は、いつから作られているのですか。

16年間続けておられる患者さんへ配布する「山賀歯科クリニック通信」の最新号。
Giomerくんのイラストを使って、Giomer製品を採用され、患者さんの予後を考えた歯科材料を使用されていることを書いておられました。
(Giomerくんのイラストは会員専用サイトの無料ダウンロードツールにあります!)

初めて作ったのは、開業して1年半経った頃でしょうか。年賀状の代わりに、歯科医院らしいものを患者さんにお届けしようと考えたのがきっかけです。年に1度だった発行が、今では季刊の年4回となり、歯科衛生士を含めスタッフも手伝ってくれています。開業した頃と比べて、患者さんは自分自身の口腔内に対する意識が高まり、リコールにも応じてくださるようになりました。
そういえば、ご夫婦で通ってくださっていて…奥様から「どうして主人には葉書が届いたのに、私には届かないの?!」と寂しそうに言われたこともありました。お二人のリコールの時期が異なっただけなので、奥様にリコールをしないつもりはなかったのですが…(笑)。

リコールが定着してきて、メインテナンスシステムが上手く機能するようになりました。ここまで来るのに10年かかりました。「痛みがなければ歯医者に行かない」「定期健診なんて受けない」。そんな状態の開業当初から比べると、コツコツと取り組んできた甲斐があったと改めて思います。何もしないでいるより、可能か不可能かわからないけれどもいろいろなことにチャレンジして良かったと思っています。努力して築いたメインテナンスシステムを継続して機能させたいので、これから10年は歯科医師を続けて後継者に引き継ぎたいと思っています。

▲ ページの先頭へ戻る