術者の感染予防対策

1 衛生的手洗い

器具の消毒・滅菌を完璧に行っていても、治療中に手が不潔であったり不衛生な操作をしたりしては、全く意味がありません。
感染予防対策の基本は、まず手洗いから!今一度、見直してみましょう。

衛生的手洗いを行う場面

  • 一般歯科治療前後(手袋着用前と外した後)
  • 観血的処置(口腔外科、歯周外科、根管治療など)の無菌操作を行う前後
  • 患者の血液や体液で汚染された器具・器械を取り扱った後
  • 周囲の環境への接触、落ちた物を拾った後など
  • 衛生的手洗いは、先に液体石けんと流水で汚れを十分に落としてから実施すること!(手に汚れ[有機物]が付着した状態で消毒剤を使用しても、効果が低い)

ハンドソープと流水による手洗い。指先から手首までまんべんなく擦り合わせて丁寧に洗い流す(約1分)

  • ①流水で手から手首まで十分濡らす(約5秒)
  • ②ポンプを1プッシュ押し、十分量のハンドソープを手掌に取る
  • ③手掌でソープをよく泡立てこする(約5秒)
  • ④指先・爪の間をよく洗う(約5秒)
  • ⑤手掌をこすりながら指間もこする(約5秒)
  • ⑥手の甲のしわを伸ばすようにこすり、指間もこする(約5秒)
  • ⑦手を合わせ、指をクロスさせ指の間を十分洗う(約5秒)
  • ⑧親指を手掌で包み、ねじり洗い(約5秒)
  • ⑨手首までよく洗う(約5秒)
  • ⑩水道栓は肘で閉める ※無理な場合は手を拭いたペーパータオルを使い直接カランに触らない
  • ⑪ペーパータオルで手指を十分に拭く
    ※手指をよく乾かせば手荒れ防止となる
    ※スタッフ全員が使うタオルは使用しない
  • ⑫ゴミ箱に手が触れないようにペーパータオルを廃棄する

2 擦式消毒法

擦式消毒法を行う場面

  • 手袋装着前の手指消毒(衛生的手洗い)の最終仕上げ
  • 目に見える汚れがないとき
    ※液体石けんだけの手洗いでは落としきれずに残った微生物も、アルコール消毒液により除去できる
    ※手が十分に乾燥している状態で行うこと
  • 擦式消毒法は洗浄効果がないため、先に液体石けんと流水で汚れを落としてから実施すること!(手に汚れ[有機物]が付着した状態で消毒剤を使用しても、効果が低い)

速乾性擦式手指消毒剤による手指消毒法(約30秒)

  • ①速乾性擦式手指消毒剤のポンプを肘で1プッシュ(約3mL)しながら、指を立てて指先から手掌に薬液を受ける
  • ②指をそろえて指先・爪の間を手掌でよくこする
  • ③手掌によく擦り合わせてこする
  • ④手背をもう片方の手掌でよく擦り合わせてこする
  • ⑤指を組んで(クロスして)両手の指の間にも擦り込んでこする
  • ⑥両指を曲げ、指の甲と手掌をこする(左右交互に)
  • ⑦親指をもう片方の手で包みねじって擦り合わせる
  • ⑧手首を擦り合わせて手首から10cm上まで薬液が乾燥するまで、両手首を丁寧にこする

②~⑧のステップは各々5回ほど擦り合わせ動作をする。⑧の後、手指が完全に乾燥するまでこする

3 滅菌手袋の着用の仕方、汚染手袋の外し方

手袋は、目視のできる湿性の血液・体液・排泄物などに触れる場合、あるいはそれらが飛散する可能性がある場合に正しく着用しましょう。

滅菌手袋の着用法

  • ①手の大きさにあった滅菌手袋を選ぶ
    (小)…#6.0/6.5/7.0/7.5…(大)
  • ②手術時手洗い後、介助者に滅菌手袋の外袋を開いてもらい、手指が汚染しないよう開ける
  • ③右手(利き手)で左手用滅菌手袋の内面(折り返し部)をつまみ、左手を入れ装着。このとき、左手の折り返しはこのままにしておく
  • ④滅菌手袋を装着した左手の4指を右手用滅菌手袋の折り返しの内側に入れ、右手を装着する
  • ⑤左手で折り返しを伸ばし右手を最後まで装着する
  • ⑥最後に左手の折り返しの内側に右手(滅菌手袋)指先を入れ、折り返しをしっかり伸ばす。右手で左腕を触らないよう注意
  • ⑦滅菌手袋を装着した後は、不潔にならないように手を上げて施術につく

滅菌手袋の外し方

※手袋表面がすべて内側に入るように、素手で表面を触らないように外す

  • ①一方の手の指を反対側の滅菌手袋の裾に引っ掛ける
  • ②裏返しになるよう外す
  • ③外した滅菌手袋をもう一方の手で握りながら手袋を外す
  • ④裏返しになるように外し、先に外した滅菌手袋が中に入るように一塊にする
  • ⑤滅菌手袋の表面を素手で触ることのないよう、感染性廃棄物として破棄する
  • ⑥滅菌手袋を脱いだ後は、直ちに衛生的手洗いを行う!

4 日常診療時のスタイル

歯科診療では、「血液や唾液の混じったエアロゾルが飛散する」ことを常に考え、正しく着用しましょう。

  • 髪の毛が垂れている
    ゴーグルなどを使用していない
    布製のエプロンは消毒できない
  • サージカルキャップの着用
    ゴーグルの着用
    消毒可能なエプロンの着用
  • 口腔外バキュームを用いる
    飛散が軽減され、診療室内をクリーンに保つことができる

5 診療前に―患者さまの口腔内の消毒

【日常】
日常の診療時にも処置前にリステリンなどのマウスウォッシュで洗口することは、エアロゾル(血液や細菌などの感染源から構成される浮遊物質)の発生を抑えることにつながります。

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【手術時】
抜歯などの手術に先立ち、事前にスケーリングなどの処置ならびにう蝕の治療を済ませる。
手術前日には入浴してもらい、男性患者には髭を剃ってもらうよう伝える。
手術直前に歯面清掃を行い、含嗽剤によるぶくぶくうがいで洗口してもらう。

  • ①体調を確認し、血圧計とパルスオキシメーターを装着する。
    バイタルサインをチェックし、測定値と測定時刻を記録する
  • ②含嗽剤
    ・イソジンガーグル or ネオステリングリーン
    ・スポイド(3mL用)、コップ
    コップに約60mLの水と、含嗽剤約3mLを入れ希釈する(約20倍希釈)
  • ③含嗽剤でブクブクうがいをさせ、口腔内全体の消毒を行う。髪の毛の長い患者には、髪の毛を束ねてもらい、女性は口紅も取ってもらう
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