クリニカルレポート
〈現場の声〉

医院愛言葉

『育もう 口から始める健康生活』を
実現するために

〜新時代の定期来院=パウダーメインテナンス〜

  • 医療法人 内田歯科医院
    歯っぴぃデンタル

    佐藤寿江/中村 恵

  •  口腔内を長期にわたって健康な状態に保つためには、術者主導のPMTCから「患者主体の高い口腔清掃意識の啓蒙」が必要とされます。また、患者さんが億劫がらずに続けやすいメインテナンスプログラムとして低侵襲かつ快適さを外すことはできません。そこで、これからのメインテナンス、クリーニングの主流になりつつあるのが、パウダーメインテナンスだと考えます。

  •  当医院ではパウダーメインテナンスを導入することでチェアタイムを短縮しながらも、スピーディーかつ効率的なバイオフィルムの除去の成果を得ることができ、結果的に予防業務システムにまで変化をもたらしました。そこで今回、当医院においてパウダーメインテナンスを、日常臨床の場でどのように活用しているのかをご紹介いたします。

チーム医療で口腔からの健康を支援

 当医院は『育もう口から始める健康生活』をスローガンに、患者さんが口腔内の健康を取り戻し、日常生活の質を維持していただけるよう支援を行なっています。具体的には、セルフケアとプロケアの相乗効果を実感していただき、患者さん自身に口腔ケアを通して「自分の健康は自分で守る」と意識を持っていただき、セルフケア・プロケアを通じた交流を共に楽しむ取り組みを行なっています。

 そのために歯科衛生士が行うブラッシング指導、SRP、食事指導を含めた生活指導に重点を置き、とりわけ自立した健康行動を実践する患者さんの育成が歯科衛生士の重要な仕事となっております。

 その中でも、まず初めに患者さんと一緒に取り組むブラッシング指導は、これからの治療を成功させ、メインテナンスに移行する際の1番の鍵になってくると同時に、「自分の健康は自分で守る」という自律型支援を行うための重要なポイントになってきます。当医院ではセルフケアの基盤はプラークコントロールと考え『歯ブラシ道場』というプラークコントロールの支援の場を設けています。

 『歯ブラシ道場』は100%磨きを目指しているわけではなく、患者さんにプラークの為害性を説明し、プラークコントロールの重要性を理解してもらい、実際に一人一人の口腔内に合ったブラッシング方法を患者さんと一緒に考え、実践していく場にしています。

 具体的には、自分で行うブラッシングだけでプラークが減少した口腔内の爽快感を体感してもらい、歯肉の変化、回復を実感しながらブラッシングに関心を持ってもらえるような指導を行なっています。

 まず、歯垢染色液を使用し口腔内を観察してもらうと、大半の患者さんは「磨いているはずなのに、プラークがこんなに残っているのか!」と、とても驚かれます。

 磨いているのに、磨けていない状況を目の当たりにしたところで、まずは自身のブラッシングテクニックに疑問を持ってもらい……さあ!『歯ブラシ道場』開始です。どんな歯ブラシがいいのか?歯ブラシをどう当ててどう動かすと効率的にプラークが落とせるのか?患者さんの『問い』が始まり、そこから患者さんと一緒に考えます。

 そうして歯ブラシ道場の回数を重ね、プラークコントロールのスキルアップと共に自身の口腔内の変化を実感し、プラークコントロールの重要性を理解してもらいます。

歯垢染色はメインテナンス来院の価値を高めます

 目で見て簡単にプラークの残存を確認できる歯垢染色液の使用はブラッシング指導には欠かせないものです。日常の限られた時間の中で全顎のプラークを落とし切るまでブラッシングを続け、さらにPMTCを行い、口腔内を綺麗にしてお帰りいただくには限界がありました。

 そのため毎回歯垢染色液を用いてブラッシング指導をすることに二の足を踏むところもありましたが、パウダー機器を導入した今では最後にきれいにできるという安心感があり『歯ブラシ道場』の患者さん、メインテナンスで定期来院される患者さんすべてに歯垢染色を行なっています。

 次に苦手部位やブラッシング困難部位のワンポイント指導を行い、その後パウダーを併用します。染め出された部位をスピーディーにピンポイントでプラークを除去することで、チェアタイムの短縮ができ、患者さんからも好評を得ています。プラークをしっかり染色し確認してもらうことは、何より患者さんのブラッシング意欲につながり、限られたチェアタイム内に本来の業務である教育とコミュニケーションの時間配分を増やせたことは医院にとっても価値あるメインテナンス来院に繋がっています。

 またオーバーデブライドメントに介入してしまいがちな補綴装置やインプラント補綴、矯正装置等のセルフケアが困難な部位のプラークも非接触で確実に除去できるため、患者さんにはセルフケアの向上だけではなく、100%磨きが出来ないプラークコントロールをカバーするため歯科医院に来院することの必要性を幅広い年代で感じてもらえる機会となっております。

矯正治療

小児

咬合面

歯肉縁下

患者さんの評価

 パウダーメインテナンスを受けた患者さんからは「もう終わったの?時間が短くて驚いた」、「身体に力が入らなくてとても楽だった」、鏡を見て「短時間でこんなにきれいになった」などの嬉しい声を多くいただいています。

 そして、歯垢染色とパウダー機器の併用の施術を重ねるにつれ、「磨き残しに対する意識がはっきりしてきた」、「衛生士とのコミュニケーションの時間が増えて安心する」、「お掃除してもらいに来るのではなく、ブラッシングのチェックに来院するという気持ちに変わった」など患者さんの歯科医院に来院する意味に変化がみられるという価値ある声を頂くようになりました。

 また家族や友人など他の人にも来院を勧めてくださる方も増えてきました。

複数台同時導入の良さ

 今回当医院では、診療室にはハンディタイプを、歯科衛生士が使用している予防専用ユニット5台のすべてにはテーブルトップのパウダー機器を導入しました。そのため歯科衛生士がどのユニットでも歯垢染色をし、患者さんと共にプラーク付着状態の確認、必要なブラッシング指導、パウダー機器で仕上げ、という同じ流れで患者さんに対応しています。

 導入したテーブルトップタイプのものは、ハンディタイプと比較すると、ハンドピースの部分が軽くスリムで操作性がとても良く、パウダーの補充回数が圧倒的に少ないことで快適な施術が可能になりました。

 歯科衛生士が使用している予防専用ユニットにすべて設置することで、歯科衛生士が口腔内の状態や目的に応じてパウダーの種類を使い分けメインテナンスに活用するようになり、作業効率を上げるだけでなく、業務の幅が広がり、ひいては医院のシステムにも変化が生じています。

衛生士の意識改革ができたパウダーメインテナンス

 このようにパウダー機器の導入によって、歯ブラシ道場や定期メインテナンスの時に毎回歯垢染色液を使用し、プラークコントロールの状態を患者さん自身に確認してもらうという施術がすっかり定着しています。

 実は、歯垢染色液を毎回使用するという業務は、パウダー機器を導入する以前は衛生士間で徹底されておらず、プラークの除去を主と考えている衛生士と患者さんの教育がより重要と考えている衛生士がいて意識のバラつきがありました。

 そのため、衛生士も意識を統一させ、共通認識として医院に根付かせたいという思いが常にありました。現在は、自立した口腔衛生ができる患者さんを支援したいという医院の基本姿勢が定着し、すべての衛生士が『プラークを出来る限り除去するには見えない物を見えるようにするという歯垢染色が必要なこと』を患者さんに声かけすることから始めるようになりました。

 そこからリスクを考えプラークコントロールの重要性、さらにそれに占めるセルフケアの比重をお伝えした後、ブラッシング指導やパウダーの噴射を行うようになりました。まさに新しいシステムが出来上がり、歯科衛生士全員の業務の目的が明確になり、意識改革ができたことでチームとして歯車がしっかりかみ合ったと感じています。

 パウダーメインテナンスを導入しただけでなく、医院のシステムまで変えることができたのは、すべての衛生士がどのユニットでも同じ意識で患者さんに向き合い施術できるようになったことがとても大きな要因です。

 また、これまで使用していた超音波チップや回転器具の手技の時間と比較するとパウダー機器を使用することで施術時間を短縮することができ、患者さんとの会話の時間に充てることで業務に変化が生まれ、スキルだけでなくコミュニケーションを通じて患者さんとの距離を縮め、良好な関係を保ちやすくなりました。ハンドスキルからコミュニケーションスキルまで総合力の向上がこれからの歯科衛生士に求められる本来の力であり、パウダーメインテナンスを通して、その変化を楽しんでいます。

  • プラーク除去からモチベーション管理へ

 当医院では、本来セルフケアとは慢性炎症を見据えた健康行動であると位置づけています。 歯科の専門家として口腔内のプラークの為害性を説明し、患者さんにプラークコントロールの重要性を理解してもらい、健康行動を起こしてもらうには、まず自身の口腔内に関心を持って頂くことが不可欠です。

 そしてそれを実現したのが歯垢染色とパウダー機器の併用です。

 自身の口腔内に関心を持つことはブラッシングのモチベーションにつながり、定期来院が真に価値あるものとなり、セルフケア・プロケアを通じた交流を共に楽しむという当医院の診療スタイルの実践にもつながっています。

 また、歯科衛生士全員で行う予防業務のスタイルもシステムの変化と共に確実に良い方向へ向かっていると実感しています。

 歯科衛生士の本来の仕事は、デブライトメントやSRPはもとより、モチベーションの管理を主体とした患者さんの教育であると考えます。

 プロフェッショナルケアの手技だけではなくプロフェッショナルコミュニケーションを身につけること、そして低侵襲と快適さを備えた施術が提供できることが長期メインテナンスを継続させる錠となるでしょう。

 これからも『充実人生支援拠点』として、患者さんに継続的来院を促し、コミュニケーションの機会を増やし、信頼関係を醸成することで、充実した人生を真に望む顧客を増やし支援していきたいと考えております。

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