中長期経営戦略

松風グループは、経営理念に基づき、世界の歯科医療への貢献度と市場における存在感を高めるべく、2012年に長期ビジョン「500億円構想」を策定しました。以降、その達成を目指し、3年ごとに第一次から第四次までの中期経営計画を策定し取り組みを進めてきました。 この間に積み上げてきた実績を基盤に、長期ビジョンを期間内に達成する第五次中期経営計画を策定し、2024年4月から取り組んでいます。

長期ビジョン ー“500億円構想”

長期ビジョン-“500億円構想”

 国内歯科市場は、総人口の減少やう蝕(むし歯)治療の減少から、今後、市場全体の大きな成長は望みにくいと考えています。一方、世界には現時点で国内の20倍の市場が存在することに加え、新興国をはじめとする各地域の経済成長や生活水準の向上を考慮すると、世界の歯科医療の需要は、今後、飛躍的に拡大することが見込まれます。

 当社は、こうした事業環境認識を踏まえ、そして“創造的な企業活動を通じて世界の歯科医療に貢献する”という経営理念を実現すべく、国内事業の基盤を維持・強化しつつ、経営資源の配分を大きく海外にシフトし、海外事業の拡大を進めてまいります。

■ 重点課題
■ これまでの主な取り組みと成果

〇 主な取り組み-販売網・販売拠点の整備、生産拠点の再配置・海外生産の拡大

〇 成果-業績推移(売上高、営業利益)

[Point]

  • 国内事業基盤を維持・拡大しつつ、海外事業の拡大を進めた結果、売上高は大きく伸長。
     ⇒ 年平均成長率(2012年3月期から2024年3月期まで):6.8%(うち、海外 14.9%)
  • 海外事業の先行投資負担を吸収できる売上規模を獲得し始めた2019年3月期以降、収益は大きく向上。
     ⇒ 営業利益率:2018年3月期 6.2% → 2024年3月期 13.4%

第四次 中期経営計画(2021年度-2023年度)の振り返り

※ROE:自己資本当期純利益率

[Point]

  • 全期間、計画達成ならびに増収増益・過去最高益を更新。経営効率(ROE)も大幅改善。
  • 国内外で売上高が伸長。円安進行の追い風はあったものの、販売網・販売拠点の整備・拡充、学術ネットワークの構築など、コロナ禍の影響が残る中でも、着実に取り組みを進展。
  • 一方、パンデミックの影響や地政学リスクが顕在化し、国内外で製品の供給不足が発生。各地域の需要増加に対応した供給体制の構築が急務。

第五次 中期経営計画(2024年度-2027年度)について

〇 主要目標指標

[Point]

  • 2012年策定の長期ビジョン「500億円構想」を期間内に達成。
  • 期間内に153億円の設備投資・投融資を計画。各地の需要増加に対応した生産体制をすべくグループ全体で90億円の先行・成長投資を実施。
  • 中長期に亘るフリーキャッシュフローの創出力を高めるべく、非事業用資産から事業用資産への積極的な組み替えを進める。併せて株主還元のさらなる拡充に取り組む。

〇 重点課題の主な取り組み内容

【研究開発】地域の需要・ニーズに適合した新製品の開発・投入

 世界的視野に立った製品開発を中心に据えつつ、世界各地の経済レベルや歯科医療の水準、インフラの整備状況も考慮し、中間層・ボリュームゾーンをターゲットとした、地域に適合した製品開発を進めます。加えて、将来的に新たな成長ドライバーとなりうる分野についても、積極的に研究開発を進めていきます。

【生産】コストダウン、生産拠点の再配置、海外生産の拡大

 人工歯や研削材など、当社が競争力を有する分野において、一層のコストダウンによる価格競争力の向上を図ります。
 また、「国内生産グループ会社の有効活用」と「海外生産の拡大を含めた生産拠点の再配置」を本社工場の生産能力の制約解消/生産コストの低減/為替変動の影響回避/高関税の回避/危険物・重量物の輸送コスト低減/デリバリーサービスの向上、などの観点から進めてまいります。
 第五次中期経営計画期間においては、国内外生産拠点の新設・増産投資をこれまでにない規模で行い、各地の需要増加に対応できる体制の構築を進めてまいります。

【営業】販売網・販売拠点の整備、国内外学術ネットワークの構築

当社製品が最終顧客である歯科医療従事者に認知されるための仕組みを構築してまいります。

▶ 販売(代理店)網の拡充

海外各地域で当社製品が歯科医療従事者に認知されているか再評価を行い、必要に応じて代理店網の拡充を進めてまいります。

▶ 販売拠点の整備

海外事業の拡大に向けて、いくつかの国・地域で拠点設置を進めてまいります。

▶ 国内外学術ネットワークの構築

各地の歯科医療関係者に影響力を持つ、地域のスタディグループやキーオピニオンリーダーに対する製品紹介や情報提供活動を進め、ネットワークを構築してまいります。

三井化学社・サンメディカル社との業務提携

2020年5月に、三井化学株式会社及びサンメディカル株式会社との資本・業務提携契約を締結し、資本関係の強化も含め、これまで以上に強固な関係を構築しました。3社が有する有形・無形の資産を融合させ、3社提携の目的である「歯科事業におけるグローバルな競争力、事業価値の向上」をはかるとともに、当社グループの成長、企業価値の拡大につなげてまいります。

M&Aの推進

製品分野、地域ごとの事業戦略(セグメント・ストーリー)に基づき、研究開発、生産、販売における体制強化のための外部との連携、発展形としてのM&Aを積極的に進めてまいります。

グループガバナンス体制の強化

当社グループにおけるグループ会社の役割は年々大きくなっています。グループ会社の活動を、当社グループ全体の企業価値向上に繋げると同時に、そこで発生する可能性のあるさまざまなリスクをコントロールしていくための体制整備を進めてまいります。

サステナビリティ経営の推進

「創造的な企業活動を通じて世界の歯科医療に貢献する」という経営理念のもと、ステークホルダーの皆様と協働しながら、企業活動を通じて社会課題の解決に取り組み、中長期的な企業価値の向上と持続可能な社会の実現の両立を目指してまいります。基本方針に掲げた「人々のQOL向上への貢献」「地球環境に配慮した企業活動の推進」「企業価値の向上を支える経営基盤の強化」「働きがいのある組織文化の醸成・人材づくり」の実現に向けた取り組みを推進してまいります。

資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応

第五次中期経営計画より、自社の資本コストや資本収益性を十分に意識した上で、積極的な成長投資、非事業資産の水準見直し、株主還元拡充などの抜本的な取り組みを推進することにより、当社グループの中長期的な企業価値向上と持続的な成長を実現してまいります。

〇 現状の分析と評価

▶ ROEは株主資本コストを超過(エクイティ・スプレッド [ROE - 株主資本コスト] はプラス)

※上記の株主資本コストは、CAPM2ファクターモデル(流動性リスプレミアム含む)による株主資本コストです。

▶ PBR・PERは医療機器セクター平均を下回る

※上図のPBR・PERは、期末株価(終値)を各事業年度の1株当たり純資産・1株当期純利益で除して算出しています。
※業種別PBR・PERは日本証券取引所の統計資料を参考にした当社調べに基づくものです。

〇 取り組むべき課題と対策

現状分析・評価を踏まえ、以下の課題に対して取り組みを進めてまいります。

01. 資本収益性の向上

500億円構想実現に向けた重点課題を推進し、主として売上高純利益率の向上によって、第五次中期経営計画の最終年度2028年3月期に、資本収益性(ROE)を直前期2024年3月期の9.5%から、13.5%へと向上させてまいります。

02. 株式市場における流動性の向上

直前期2024年3月期における、当社の1日当たり売買金額(65百万円)、年間の出来高回転率(0.37回転)は、プライム市場上場企業の下位15%に位置しています。 売買出来高や売買金額が低さが、流動性リスクプレミアムとして資本コストに付加されている状況を改善すべく、2024年9月30日を基準日とした、1株を2株とする株式分割を実施することといたします。

【株式分割の実施】

【目的】

最低投資金額の引き下げ
株式流動性の向上
投資家層の拡大

【方法】

普通株式1株につき
2株の割合をもって分割
(2024/9/30基準日)

【分割で増加する株式数】

分割前の発行済株式総数
17,894,089株
分割後の発行済株式総数
35,788,178株

【日程】

基準日公告日:2024/9/13
基準日:2024/9/30
効力発生日:2024/10/1
03. IR活動の強化

当社グループの成長ストーリーにおける投資家との間の認識ギャップを埋めるべく、幅広い投資家層に対して適時的確なアプローチを進めてまいります。

投資家との対話促進 IR情報の英文化

【これまでの取組み】

  • アナリスト・機関投資家向け決算説明会の開催(年2回:通期/2Q)
  • 1on1ミーティングは主に総合企画担当役員が担当して実施(2024/3期は98回、うち外国人投資家34回)

【今後の方針】

  • 1on1ミーティングの代表取締役社長の参加頻度を上げる
  • 社外取締役の参加検討
  • IR担当部署の機能強化
  • 海外ロードショーの実施等、外国人投資家へのアプローチを強化(右記含む)

【これまでの取組み(実施済)】

  • 株主総会招集通知
  • 決算短信(参考資料含む)
  • 2Q、通期決算説明会資料
  • 1Q、3Q決算補足説明資料

【2025/3期から実施予定】

  • 既に英文化実施済の各種資料の日英同時開示
  • 全ての適時開示資料/プレスリリース類の日英同時開示
  • IRサイトの英文ミラー化
04. 資本政策の明確化 / 株主還元の拡充
  • 生産関連投資を中心に過去最大規模の成長投資を実行。投資資金は中期経営計画期間において創出する営業CF、政策保有株式売却、デッドファイナンスで充当
  • 株主還元の拡充
  • キャピタルアロケーション
  • 第五次中期経営計画期間(2025年3月期~2028年3月期)の営業キャッシュフロー176億円に対して、153億円の設備投資・投融資と74億円の株主還元を計画。
  • 営業キャッシュフローの超過額は、政策保有株式の売却と有利子負債を充当。ネットキャッシュ は58億円の減少を見込む。
※ネットキャッシュ=現預金+投資有価証券-有利子負債

(ご参考)